盲目の天使
「リリティス王女。こちらへ来て、酌をしてくれぬか」
王は、鋭い目でリリティスに話しかけた。
その白目は、赤く充血し、獣のように見える。
「父上、リリティスは目が見えませんので・・」
とっさにカルレインが、返事をすると、プロンは、ますます機嫌が悪くなった。
「ほう、お前は、王女に私の酌をさせることは、できないと言うのか」
プロンの敵意をむけた低い声に、華やかだった場の空気が、一瞬で緊張感に包まれる。
プロンが酔っているのは、傍目に見ても明らかだったが、
彼を止めようとする者は、いなかった。
先ほどのカルレインの発言が、冗談ではないことを見抜き、
好意的に受け取っていない者がいることも、その理由の一つだ。
次代の王は、カルレインである可能性が濃厚だが、
そうではない可能性も、多分にある。
全ては、王の、さじ加減一つなのだ。
いならぶ、臣下たちは、固唾を呑んで、この結末を見守っていた。