盲目の天使
「何を見ている。皆飲め!」
王は、場が静まっているのを見て、楽を奏でるよう合図し、
周りの人間も、王の言葉で歓談を再開した。
一見すると、賑やかな、宴。
カルレインは、プロンの、どんな小さな動きも見逃さないというように、
瞬きもせず、王を睨みつけている。
そのカルレインを、これまた瞬きもせずに、見張っているマーズレン。
リリティスは、侍女の運んできたお酒の入った器を受け取ると、
プロンのほうへ傾けた。
震える手に、決して気づかれてはならない。
こんな場で、粗相をすれば、それこそどんな言いがかりを付けられるか知れないのだ。
“無礼講”などというものが、形だけのものであることなど、
幼い子供にだってわかることだ。
「プロン王。よろしいですか?」
リリティスは、なるべく平静を装って、お酌をしようとしたが、
プロンの杯がどこにあるのかよくわからず、戸惑った。
その様子を見て、プロンはリリティスの手に、自分の手を重ねる。