盲目の天使
柔らかく、小さな手。
一瞬、こわばった肩が、いっそうプロンの心を刺激した。
「目が見えないのでは、酒を注ぐのも難しいな。手伝ってやろう」
プロンは、いやらしい笑みを浮かべて、
リリティスの手を握ったまま、自分の杯に酒を注いだ。
久々の、若い女の肌。
嫉妬深いソレイユが、次々に女を排除するからな、と王は心の中で、ひとりごちた。
リリティスは、自分が嫌がっていると気取られないように、
申し訳ありません、と言って、されるがままになっていた。
その様子に、カルレインがこぶしを握り締めて、今にも立ち上がろうとしている。
マーズレンは、後ろから必死でそれを押さえた。
「今、あなたが騒ぎを起こせば、リリティス様の思いが無駄になります。
どうか、はやまって、王に逆らうようなことはおやめください!」
マーズレンに腕を押さえられて、カルレインは、ぎりりっ、と奥歯をかむ。
リリティスに何かしたら、父といえど、決して許さん!
カルレインは、自分の中の全ての理性を総動員して、宴席に座っていた。