盲目の天使

「あっ!」


小さな声を出して、リリティスは、プロンの胸へ倒れこむ形になる。


「も、申し訳ありません」


リリティスが、急いで体をおこそうとすると、プロンはリリティスの背中に手を回して抱きしめた。


その時、その間合いを待っていたかのように、ソレイユがプロンに話しかけた。


「プロン様。

その杯、念のため毒見のものに飲ませたほうが、よろしくはありませんか?」


てっきり、リリティスとの間に、割って入られるのかと思っていたのに、

ソレイユは、まったく関係のない事を言う。


人前であたりちらすのは、誇りが許さぬ、ということか。


ソレイユの言葉に、プロンは、その杯を、そのまま毒見役の者に渡した。


プロンは、すでにリリティスに夢中で、杯など、どうでも良かった。


カルレインは、そんな二人の様子に集中していて、毒見役の様子になど気をとめていない。


ソレイユは、毒見役が杯に口をつけたのを見て、にたりと笑った。





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