盲目の天使



・・母上?



アルシオンは、リリティスの様子を心配そうに見つめながら、

視界に入った母の様子が気になった。


いつもなら見向きもしない毒見役のほうを、食い入るように見つめている。

王族には専用の毒見役がいて、こういった宴席はもちろん、

普段から、食事を毒見するなど当たり前のことだった。


しかも、嫉妬深い母が、

王に寄り添うリリティスを、遠ざけようとしないことにも、強い違和感を感じる。


いつもなら、王の周りに、はべる女たちに、色々と難癖をつけている頃だ。

その母が、なぜ王やリリティスではなく、毒見役など見つめているのか。


アルシオンが、毒見役の方を見たとき、突然その男が奇声を上げた。


「ぐぅおっ・・・!」


たった今、王の杯からお酒を飲んだ毒見役が、喉を押さえて苦しみだしたのだ。


宴席は、一瞬どよめいたが、すぐに控えていた王専属の医師が、毒見役の男に近寄り、

兵士たちが、王を守るように取り囲んで警戒した。



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