盲目の天使
誰も、何も、発せず、さっきまでの喧騒が嘘のように、この場を静寂が支配する。
「ち、違います!
私は何もしておりません!」
やっとのことで、事態を飲み込んだリリティスは、震える声で、潔白を主張した。
「黙れ!小娘が。
お前でなければ、誰がやったと言うのだ!」
兵士は、リリティスの腕を、後ろ手にひねりあげた。
「あぁっ!」
リリティスの細い腕は、今にも悲鳴を上げて、折れてしまいそうだ。
「やめろ!」
カルレインは、リリティスの腕を捕らえた兵士に、恐ろしい声でそう言うと、
手加減もせず、兵士の腕を、ねじり上げた。
今度は、カルレインに腕を取られた兵士が、うめき声をあげて、
さっと、リリティスの腕を離した。