盲目の天使

プロンの剣幕に、その場にいた全員が、凍りついたように静止した。

プロンは、飛び散ったリリティスの首飾りを、食い入るように、じっと見つめる。


その視線に気づいた医師が、首飾りについていた石を拾い上げ、手に取った。


「これは・・・。首飾りの中に、細工がしてありますな。

石が蓋になっていて、中は空洞になっております」


医師は、しばらく、とびちった首飾りを集めて調べていたが、

突然、大きな声を出した。


「王よ!

猛毒のチトの実を、すりつぶした粉が入っております!」


場は、一瞬にして、戦場のように、騒然となった。


チトの実は、ノルバスではよく知られる木の実で、

一般には猛毒として知られるものだった。


少量なら眼病の薬として、効果があるが、大量に摂取すれば、命の危険がある。

戦場では、実を煮詰めて濃度を高くし、矢じりに塗って、敵を倒すのに使われていた。





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