盲目の天使

「母上、父上が毒殺されたかけたというのに、心配ではないのですか?」


アルシオンは、母の部屋にたちこめた、

慣れているはずの、香の匂いにむっとして、鼻に手をやる。


「毒殺は未遂に終わったろう。カナンの小娘が捕まって、何の心配もない。

それに、これでカルレインが跡継ぎになることもなくなる。

次代の王は、お前で決まりだ」


オホホホ、と大口を開けて、下品に笑う母を見て、アルシオンは眉根を寄せた。


「兄上は、腹違いといえど私の兄ですよ。それをそんな風に言うなんて」


アルシオンの機嫌が悪い理由が、ソレイユには、さっぱり分からなかった。


彼女にしてみれば、自分だけでなく、自分の息子のためにも

今回の件は、上出来だと思っていたからだ。


そのうち、アルシオンも、この母に感謝する日が来るだろう。


ソレイユは、酒を勢いよく飲み干すと、さらに、酒を注いだ。






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