盲目の天使
「マーズレン!医師を呼べ!
リリティスが、チトを飲んだ!
毒消しを持ってくるんだ!
急げ!!」
カルレインは、切羽詰ったように、悲痛な声で命令した。
その腕には、抜け殻のような、愛する少女の体。
「なっ?!わかりました!!」
マーズレンは、大急ぎで塔を出ると、医師を呼びに走った。
牢に残ったのは、軍を取り仕切るコウガイ将軍と、その部下たち。
念のためにと、カルレインが、マーズレンに呼びにいかせていた兵士だ。
「カルレイン様。これは一体・・」
歴戦の勇者も、目の前の光景に、言葉を失う。
・・これは、大変なことになった。
判断を誤れば、国が沈む。
傍目に見ても、王が殺されたことは、明らかだ。
カルレインを信じるかどうかではなく、
問題は、彼がプロンの遺体と、ここにいたことだろう。
コウガイは、眉間のしわを深くして、部屋の中を、ぐるりと見渡す。
カルレインが答えるよりも先に、ソレイユがコウガイ将軍に走り寄った。