盲目の天使
「そんなに簡単に、諦めるのですか?」
「・・・・」
カルレインは、言葉に詰まった。
「すぐに答えがほしいとは、思っていません。
ですが、リリティスのためにも、もう一度、良くお考えください」
・・・リリティスのため、か。
「わかった。
よく考えよう」
カルレインは、アルシオンの肩を軽く叩くと、さわやかな表情を浮かべて、歩き始めた。
いつの間にか、弟は、自分などより、ずっと立派になってしまった。
・・痛いところを、ついてくるな。
国を治める話をしながら、リリティスの名前を、口にする。
諦めるな、ではなく、諦めるのか、と問う。
それは、カルレインの誇りをくすぐり、その気にさせる、高度な政治的駆け引きにも思える。
負けてはいられないな。
カルレインは、アルシオンの思惑通りに、動かされそうな予感がしたが、
腹がたつどころか、むしろ、爽快な気分だった。