盲目の天使
その日の夕方、カルレインはいつものように、リリティスの部屋を訪れた。
今日は、カナンへ旅立つ前日ということで、ノルバスの豪華な食事を、一緒にとることになっていた。
「入るぞ!」
言葉を発したときには、すでに部屋の中央まで来ているカルレインの前に、
オルメが、仁王立ちで、待ち構える。
「入るぞ、ではなく、入ってしまいました、のお間違いでは、ありませんか?」
「ん?あぁ、悪い悪い。そんなに怒るな」
カルレインの困った様子を見て、リリティスが、くすくすと笑っている。
このひと月で、リリティスは、記憶のないノルバスでの暮らしにも、ずいぶんと慣れ、
豊かな表情を見せるようになっていた。