盲目の天使
翌朝は、快晴で、旅の出発には、もってこいだった。
「支度は、できたな?」
旅に出ることは、内密にしてあったため、
カルレインに付き従っていた、ごく少数の兵士しか同行せず、
見送りも、ほとんどない。
「では、行って来る」
「兄上、どうかお気をつけて。あの話のお返事、待っております」
「わかった。必ず最善の策を考える」
カルレインの返事に、アルシオンは、満面の笑みをうかべた。
どうやら、前向きに考える気に、なってくれたらしい。
この兄のことだ。
一度やる気になれば、困難を乗り越えていく道を、必ずや探し出すに違いない。
アルシオンは、カルレインの横に、守られるように立っているリリティスのほうを向くと、
おもむろに、手を差し伸べた。
「兄を・・・、どうか、よろしくお願いします」
リリティスは、カルレインに指示を仰ぐように目をやると、
彼は、ほんのわずか、頬を緩ませて、こくんと頷いた。
「あの・・私のほうこそ、ご迷惑をおかけしました」
アルシオンの手を握ると、力を込めて、握り返される。
その目は、まっすぐと、リリティスをみつめていた。
まるで、彼女の心の奥を、射抜くように。