盲目の天使
そして今度は、カルレインを抱きしめると、周りに聞こえないように、耳元で囁いた。
「彼女を不幸にしたら、私が、奪いに行きますから」
カルレインは、ふっと微笑んで、アルシオンを抱きしめかえした。
「不幸になることはありえないから、お前の出番はないな」
二人が抱き合って笑うと、リリティスも、嬉しそうに微笑んだ。
アルシオンには、予感があった。
疾風の黒鷲。
きっと、この気高く誇り高い兄は、自分のために、二度とこの地を踏まないつもりだと。
それを防ぐために、カナン国の話を持ち出した。
どう転ぶかは、分からないが、カルレインならば、きっと・・・。
そして、オルメもまた、カルレインの考えを、察知していた。
敵には、非情だが、いったん仲間と認めると、どこまでも、甘く、優しいカルレイン。
一度、アルシオンを認めたからには、自分がどんな犠牲をはらっても、
アルシオンのために、最後まで、献身的に尽くすだろう。
ノルバス国を愛するカルレインは、二度と故国の地を踏むまい。
そしてそれは同時に、
自分の息子とも、永久の別れになるだろうということを、意味していた--。