盲目の天使
険しいストレア山脈を超えると、あっという間に、気楽な旅に変わった。
カルレインについてきた兵士も、今回は戦に赴くわけではない。
それぞれが、周りの景色を楽しみ、食事は皆で囲んで、楽しい会話に花を咲かせた。
急ぐ旅でもないため、無理して進む必要もない。
旅することが目的の、旅。
そんな雰囲気が、あった。
「それにしても、ルシルの悲鳴は、相変わらずだったなぁ」
ルシルが、ストレア山脈を越えるときに、
またしても、大声で叫んでいたのを、マーズレンが、からかう。
「仕方ないでしょう!あんな恐ろしいところを通るんですから。
ねぇ、姫様?」
ルシルは、同意を求めてリリティスの方に顔を向けた。
えぇ、と返事をしたものの、リリティスは、不思議に思う。
・・そういえば、変ね。
切り立った崖に、狭い道。
兵士たちの緊張が、伝わって、肌がぴりぴりと痛んだ、はず。
・・なのに。