盲目の天使
夜半、野営を抜け出したリリティスは、一人、膝を抱えて星空を眺めていた。
思い出そうと努力すればするほど、記憶は、闇の中に沈んでしまう。
・・私、どうして思い出せないの?
こんなに、よくしてもらっている人の事を、すっかり忘れているなんて。
もしかして、何か思い出したくないことでもあるのだろうか。
それとも、自分の努力が足りないのか。
もっとよく探せば、自分を治せるお医者様が、いるのだろうか。
しばらくそうしていると、体が冷えてきて、思わず自分の両肩を抱きしめて、身震いした。
と同時に、後ろから暖かい毛布がかけられて、優しい腕にすっぽりとくるまれた。
「夜は冷える。風邪をひくぞ」
「カルレイン様・・」
カルレインの膝の間に、後ろから挟まれるような格好になって、
リリティスは、とても心が安らいだ。
不思議と、恥ずかしいとは思わない。
「眠れないのか?」
カルレインは、そう言いながらリリティスの頭を、子供のように撫でた。