盲目の天使
「違います!!
そうではありません!」
リリティスは、大きな声でカルレインの言葉を否定した。
義務感などではない。
自分は、ちっとも、やさしくなどない。
カルレインとの事を思い出したいのは、自分のためにだ。
「私、私は、自分がカルレイン様とのことを、思い出したいのです。
ルシルもオルメも、肝心なところは、はぐらかして教えてくれませんでした。
私は、なぜノルバスに行ったのですか?
カナンは、ノルバスの支配下にあるのでしょう?
やはり、奴隷として、囚われていたのですか?」
リリティスの悲痛な叫びに、カルレインは、心が引き裂かれそうだった。
自分がおろかだったために、リリティスに真実を告げるのが辛い。
それでも。
「わかった。では、俺に聞けばいい。
何でも答えてやる。包み隠さずな」
本当のことを話せば、リリティスは、自分を嫌って離れていくかもしれない。
しかし、カルレインは、リリティスの苦しむ姿をこれ以上見るのは、とても耐えられそうになかった。
もしも嫌われれば、もう一度、最初からやり直せばいいだけだ。
心を尽くして、振り向いてもらえるように、何度でも。