盲目の天使
「なぜ、私を自分のものにしようと?」
リリティスの声が、震えている気がしたが、カルレインの声も、震えていた。
「カナンの王女を連れていれば、先々に便利だろうと思ったからだ」
「それだけですか?」
「・・・それだけだ」
リリティスを見たとき、確かにカルレインの心は動いた。美しいとも思った。
しかし、それはあくまでも“勝者”である自分が、
リリティスを“戦利品”として見たときの感想であり、
愛などというものとは、程遠いところにある感情であった。
この期に及んで、リリティスに、嘘をつきたくはなかった。
たとえ、それが、どんな結果を招こうとも。
・・憎まれても、仕方ないな。
カルレインは、吐き気がして、額を手で覆った。