盲目の天使
あいかわらず、馬車は上下左右に揺れていた。
木々の間から、囁くような木漏れ日が、馬車の屋根に降り注ぐ。
「さあ、どうぞ。喉が渇いたでしょう」
ルシルは、リリティスに水筒を差し出して、飲み口を彼女の口につけ、飲ませるための補助をした。
姫様のせいでは、ありませんから、という言葉を、おずおずと付け足して。
ルシルの優しい気持ちに促され、頷いたリリティスが、まさにそれに口をつけようとした時、
馬車の車輪が小石に乗り上げ、大きく揺れたかと思うと、急停車した。
バシャ!!
激しい水音が、外にまで響いて、馬車のすぐ隣を並走していた兵士は、首をかしげた。
はて、なんの音だろう。まるで、水音のようだったが。
動かぬ箱の中には、突然のことに呆然として、石像のように固まる少女が二人。