盲目の天使
「リリティス!
ここで、少し休憩するぞ。
降りて、体を休めろ」
カルレインが馬車の扉を開けると、顔中びしょぬれのリリティスと、
ぽかんと口をひらいたまま、隣に座ったルシルの姿が目に入る。
カルレインは、二人の様子を交互に見比べた。
別に、揉めているわけではなさそうだ。
第一、ルシルが、わざとリリティスに水をかける理由もないだろう。
「なんだ、お前たち。
馬車の中で水浴びなどして。
そんなに暑いなら、すぐそこに湖があるから、
沐浴して来い!」
カルレインのあきれたような声音がおかしくて、リリティスは思わず笑い声をあげた。
腹の底から、おもしろくてたまらないという風に。