盲目の天使

リリティスが笑い出すと、つられてルシルも笑い出した。

お腹を抱えて、げらげらと大きな声で。

二人の笑い声が、あたりに響いて、周りにいる兵士たちが、何事かと目を向ける。


「なんだ?」


水をかぶって何が楽しいのか。

わけが分からず、カルレインは訝しげに眉をあげた。


「なんでもありません。ルシルと一緒に話をしていて、とても楽しかったのです」


リリティスの愛らしい笑顔を見ると、カルレインの頬が緩んだ。


「ようやく、笑ったな」


「え?」


「ずっと、笑顔がないのが気になっていた。笑っているほうが、ずっといい」


そう言って、カルレインは、リリティスの額にかかる濡れた前髪を、右手ではらいのけると、

そのきれいな額に、そっと唇を落とした。






< 45 / 486 >

この作品をシェア

pagetop