盲目の天使
リリティスが笑い出すと、つられてルシルも笑い出した。
お腹を抱えて、げらげらと大きな声で。
二人の笑い声が、あたりに響いて、周りにいる兵士たちが、何事かと目を向ける。
「なんだ?」
水をかぶって何が楽しいのか。
わけが分からず、カルレインは訝しげに眉をあげた。
「なんでもありません。ルシルと一緒に話をしていて、とても楽しかったのです」
リリティスの愛らしい笑顔を見ると、カルレインの頬が緩んだ。
「ようやく、笑ったな」
「え?」
「ずっと、笑顔がないのが気になっていた。笑っているほうが、ずっといい」
そう言って、カルレインは、リリティスの額にかかる濡れた前髪を、右手ではらいのけると、
そのきれいな額に、そっと唇を落とした。