盲目の天使

リリティスが、諦めて湖から出ようと、体の向きを変えたとき。

それは、わずかな油断だった。


コケの生えた石に体重をかけると、足がすべり、後ろから、水の中へ倒れてしまった。



うっ、苦しい・・・。



思わぬ転倒で、水を飲んでしまったリリティスは、じたばたともがく。

水面が、どちらの方か、わからない。

一瞬、死んでしまうのではないかという、恐怖が湧き出た。


やっとのことで、なんとか立ち上がったが、少し流されて、腰の辺りまで水がきている。



どうしよう。前に進めない!



湖から下流の川へと流れていく水流に抗えず、たちすくむ格好になった。

そこは、思った以上の水圧で、立っているのがやっと。

とても、岸までたどり着けそうもない。

それどころか、じりじりと川下の方に流されていく。



・・・どうしよう。

助けて、カルレイン様っ!



恐ろしさに、身が縮み、声を出すこともままならない。


心の中で、必死にカルレインの名を叫んだ。










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