盲目の天使
「リリティス!!」
空耳かと思った。
一番、聞きたい人の、自分を呼ぶ声。
岸に目をやると、そこにはたった今、心の中で助けを求めた、カルレインがいる。
うそ?本当に、カルレイン様なの?
あまりに、怖くて、今度は、幻覚でも見ているのではないか。
そこを動くなよ、という声で、現実なのだと安堵する。
自分を見つけてくれた。
良かった・・・。
ほっとして緊張を緩めた瞬間、
リリティスは足をとられて、そのまま濁流に、のみこまれてしまった。
「きゃあ~!ゴホッ!」
リリティスが流された刹那、カルレインは、獣のように鋭い目をして湖に飛び込んだ。
リリティスのもがく姿が、視界の端に映る。
頼む!
届いてくれ!
カルレインは、大きな両腕で水をひとかきすると、リリティスに向かって腕を伸ばす。
リリティスの持っていた瓶が、雨粒を受けながら、するりと水面を流れていった--。