盲目の天使
このままやむかと思われた雨は、本降りになって降り続いている。
カルレインは、気絶したリリティスを抱き上げ、雨をしのげる場所を探していた。
くそっ!
かなり下流に流されたな。
なんとかリリティスの体に手が届いたカルレインは、
川の途中にある大きな岩に、必死でしがみついた。
想像以上の流れの速さで、カルレインでさえ、
気を抜けば、そのまま流されていきそうだった。
すでに、リリティスは気を失っており、
カルレインは、その小さな体を肩に抱きかかえ、なんとか岸にたどり着いたのだった。
「リリティス!リリティス!」
カルレインは、突き出た岩が屋根のようになって、雨があたらない場所を見つけると、
その下にリリティスを寝かせ、頬を軽く叩いて、肩を抱き起こした。
頼む!目を開けてくれ!
記憶を取り戻してほしいなど、やはり、贅沢な望みだ。
ここに、こうして生きていることこそが、なによりも幸せなことなのだから。