盲目の天使
・・この雨では、連中も、俺たちを見つけられないだろうな。
まぁ、獣も動かないだろうし、一晩くらいは何とかなるだろう。
川を流されたときに、長剣を落としてしまい、
カルレインは、胸にしまった短剣以外に武器を持っていなかった。
「リリティス。何でもいいから、何か話をしてくれないか」
リリティスの体の震えは、何とかおさまってきた。
カルレインは、外の気配に気を配りながら、リリティスのうなじに、吐息混じりに囁く。
・・声が、聞きたい。
死の恐怖を感じたからか。
それとも、ただ単純に、愛する少女の声を聞きたいのか。
「何かと言われても・・」
「そうだな、小さい頃の話はどうだ?
この森を良く知っていると、そう言ってたろう?」
こんな風に、カルレインと二人きりで、ゆっくりと話をするのが久しぶりだったので、
リリティスは、こんな状況に陥っていることを、少しだけ嬉しく思った。