盲目の天使
「私は、幼い頃、この近くに住む農夫の家で、育てられたんです」
リリティスの話は、意外なものだった。
てっきり、両親や侍女に付き添われて、遊びに来た楽しい思い出話を聞かされると思っていたのに。
「王女が、農民として、育てられたというのか?」
「はい。正確には、月の半分を城で、もう半分を農民として、暮らしていたんです」
カルレインは、リリティスの話に興味を持った。
ノルバス国では、身分の垣根がはっきりとしており、
王族が、農夫と直接口をきくなどというのは、ありえないことだ。
「私の父は、カナン国を支えるのは農民だと、常にそう申しておりました。
だから、私には農夫の気持ちが分かるようになりなさいと、
種付けや収穫期には手伝いをするために、預けられていたんです」
「そうだったのか」
カルレインは、外へ出て、リリティスが急に活発になった理由が分かった気がした。
あれは、急にそうなったのではなく、
もともとそうだったものが、解放されて現れただけなのだ。