盲目の天使

「まぁ!なんてきれい!」


ルシルは、太陽を浴びてキラキラと光る水面に歓喜の声を上げる。


「姫様は、こんなところに湖があるなんて、ご存知でしたか?」


リリティスは、遠い昔、まだほんの小さかった頃、

初めて父と一緒に、この湖に来た時のことを思い出していた。

滝つぼに落ちて、危うく溺れかかったときのことを。


「えぇ、多分、私が知っているところだと思うわ。

少し離れたところに、小さな滝がないかしら?」


「あ、あります!川から、水が流れ込んでいるのでしょうか?」


「えぇ。確か、上流は、ケータ川に繋がっているはずよ。

・・ノルバス国へとね」



懐かしい。

あの頃は、まだ目も見えていたから、よく木登りをして、女の子の遊びではないと、叱られた・・・。



毎日のようにこの森で遊んだ記憶が、鮮明によみがえって、

リリティスは、一瞬で過去の世界に戻ったような気がした。


両親が生きていた頃。

自分の15年の人生の中で、もっとも幸せだった頃・・・。






< 47 / 486 >

この作品をシェア

pagetop