盲目の天使
「まぁ!なんてきれい!」
ルシルは、太陽を浴びてキラキラと光る水面に歓喜の声を上げる。
「姫様は、こんなところに湖があるなんて、ご存知でしたか?」
リリティスは、遠い昔、まだほんの小さかった頃、
初めて父と一緒に、この湖に来た時のことを思い出していた。
滝つぼに落ちて、危うく溺れかかったときのことを。
「えぇ、多分、私が知っているところだと思うわ。
少し離れたところに、小さな滝がないかしら?」
「あ、あります!川から、水が流れ込んでいるのでしょうか?」
「えぇ。確か、上流は、ケータ川に繋がっているはずよ。
・・ノルバス国へとね」
懐かしい。
あの頃は、まだ目も見えていたから、よく木登りをして、女の子の遊びではないと、叱られた・・・。
毎日のようにこの森で遊んだ記憶が、鮮明によみがえって、
リリティスは、一瞬で過去の世界に戻ったような気がした。
両親が生きていた頃。
自分の15年の人生の中で、もっとも幸せだった頃・・・。