盲目の天使
昔と変わらず、鳥たちが、愛を囁きあっているのだろうか。
耳を澄ませば、そこかしこで、話し声のようなさえずりが、こだましている。
リリティスは、服を脱ぐと、湖に入った。
少し冷たい水の温度が、さっきまで暗くなりがちだった頭を
すっきりとさせてくれて、気持ちが良い。
ルシルは、少し離れたところで、リリティスの服を洗い、手早く木に吊るしている。
「いけない、姫様!
私、歩くときに姫様の替えの服を、木にでも引っ掛けたみたいです。
布地が傷んでしまったので、馬車まで行って、もう一枚とってきますね」
すぐに戻りますから、と告げて、ルシルは足早に立ち去った。
このまま、ここにこうしていられたら・・・。
無理な願いだとわかってはいても、考えずにはいられない。
強い風が吹き抜けて、森中の木々がざわめくと、
リリティスは、はっとして、現実の世界に意識を戻した。
太陽が隠れたのか、急に、ふっと温度が下がったような印象を受ける。
少し肌寒さを感じて、リリティスは、湖から上がろうか迷った。
「ルシル?」
声をかけてみるが、ルシルはまだ戻ってはいないらしい。
仕方なく、リリティスは、体を乾かそうと、手探りで湖から出てきた。