盲目の天使
それから数週間が過ぎ、カナン城での暮らしに落ち着きを取り戻した頃、
リリティスは、カルレインとともに、城の一番高い展望台に上っていた。
そこは、敵襲をいち早く察知するための場所であり、
カナン国を、もっとも遠くまで見渡せる場所であった。
「本当に、緑の豊かな国だな」
カルレインは、はるか先まで続く緑の台地に、目を細める。
岩山の多いノルバスには、ない風景。
「はい。これが、永遠に続いていけばよいですね」
リリティスの美しい髪が、風にたなびいて、きらきらとひかりを描いている。
「リリティス。
もし俺が、カナン国の王になりたいと言ったら、どうする?」
カルレインは、一語一語、ゆっくりと、だがはっきりと声に出した。