盲目の天使
リリティスは、驚きはしなかった。
旅の間、カルレインが、話すカナン国の未来像は、リリティスの心に染み入っていた。
「カルレイン様は、私を愛していらっしゃいますか?」
唐突な質問に、カルレインは、話をはぐらかされたのかと思ったが、
リリティスのまなざしは、何かを秘めたような強い輝きを放っている。
「あぁ。俺はリリティスを、何者にもかえがたく愛している」
それは、飾らない、カルレインの素直な気持ち。
「では、カナン国を、愛していらっしゃいますか?」
・・私と同じように、愛していらっしゃいますか?
リリティスには、わかっていた。
その答えを。
カルレインよりも、ずっと正確に。
彼が、カナンをどう思っているのかということを。
・・カナン国を愛しているか、だと?
カルレインは、目を閉じて、リリティスの言葉を繰り返した。