盲目の天使
確か、洗った衣類を、ルシルが木の枝にかけたはず。
リリティスは、慎重に、一本一本、木の幹に触れて、自分が脱いだ衣を探す。
と、何本目かの木にたどりついたとき、枝から揺れる布地が、彼女の手に触れた。
あ、あったわ。
ほっとして、その布に手をかけたとき、
自分の手の甲に、誰かの手が、包み込むように重ねられた。
「きゃっ!!」
予期せぬ出来事に、リリティスは、大急ぎで手を引っ込めようとするが、
重ねられた手は、彼女の手を握りしめたまま、決して離そうとはしない。
誰?誰なの?
ルシルだと思いたかったが、その手は、ごつごつと大きく、
剣だこがあるのだろうか。
硬い掌は、どう考えても女性のそれではなかった。
しかし、自分のことを知っている者が、いきなりこんな、失礼なまねをするだろうか。