盲目の天使
賊?まさか!
このあたりは、ノルバスの兵士たちが、固めているのに。
「お離し下さい!大きな声を出しますよ!」
精一杯、強気の姿勢に出る。
決して、震えていることに、気づかれてはならない。
リリティスの毅然とした声に驚いたのか、近くの枝にとまっていた数羽の鳥が一斉に飛びさった。
相手は、無言のままで、いきなり乱暴をはたらくという風でもない。
リリティスは、掴まれている手をどけようと、
反対の手で、相手の手首を握ったところで、ふと、何かが頭を掠めた。
「・・カルレイン・・様?」
なんの確信もないのに、なぜかそんな気がして、
カルレインの名が、唇から勝手に転がり落ちた。
「なぜわかった?」
聞き覚えのある低い声とともに、
リリティスの手の甲に、カルレインの暖かい唇が落ちてきた。