盲目の天使
「いつまでもそのままでは、風邪をひく。馬車へ戻って着替えろ」
ぶっきらぼうに、そう言うと、カルレインは歩き始めた。
後付のような理由ではあったが、まったくのでたらめでもなかった。
「じ、自分で歩けますから」
なんとかこの体勢から逃れようとするリリティスを、カルレインは、しっかりと抱きかかえる。
「俺は早く食事にしたい。お前の足では時間がかかる。しっかりつかまっていろ」
「はい・・」
いかにもな、もっともらしい理由で、おとなしくなったリリティスは、
恥ずかしげに、カルレインの首に手を回した。
静かに自分に身をゆだねるリリティスを見て、
カルレインは幸せそうに微笑むと、馬車に向かって歩を進めた。
なるべくゆっくりと。長い時間を二人きりでいられるように。
・・くそっ!もう着いたか。
馬車へ戻ると、ルシルが首を長くして待っていた。
カルレイン様が、リリティス様をお連れすると言うので、お迎えには行かなかったんです、
とルシルが言うのを聞いて、リリティスは、
カルレインが偶然ではなく、わざわざ自分を迎えに来たのだと知った。