盲目の天使
玉座の前まで移動すると、カルレインは、リリティスを立たせたまま、王に膝をおり、両手を後ろで組んだ。
それは、男同士の場合に、位が上の者や相手に敵意がないことを示す、この国の正式な礼であった。
「ただいま、戻りました。父上」
カルレインは、野太い声で、しっかりと発音した。
・・・この私の前で、堂々としすぎているな。
ノルバス国王プロンは、カルレインの態度を苦々しく思ったが、
部下たちの手前、威厳を保って、声をかけた。
「よくぞ戻った、カルレイン!このたびは、わずか2ヶ月足らずで、カナン国に大勝利をおさめた。
この功績は、すべて、そなたのものだ。のぞみの褒美を取らせよう!皆よいな!」
王の発言に、周りの人々から歓声がおこった。
「ノルバス王、万歳!カルレイン様、万歳!」
「ノルバス王、万歳!カルレイン様、万歳!」
王の口から出た、自分の故郷の名に、リリティスは、少なからず動揺を覚えた。
「そこに連れているのが、カナン国の王女か?」
歓声がおさまると、プロンは、リリティスに目をやる。
注目を浴びたリリティスの鼓動は、急速に高まった。