盲目の天使
「はい、そうでございます」
カルレインは、プロンに軽く頭を下げた。
「ふむ。捕虜として軟禁するのか?」
「いえ、そうではありません」
「ではどうするのだ?」
プロンの問いに答えず、カルレインは、目を伏せる。
「ん?どうした。言ってみろ」
珍しくおとなしいカルレインの様子に興味をひかれ、プロンは先を促した。
今度は、何を考えている?
「先ほど、望みの褒美を取らせると、そうおっしゃいましたね」
カルレインの言葉に、プロンはわずかに眉根を動かした。
どうやら、少し、面倒なものがほしいらしい。
金か、女か、地位か。
ひょっとすると、土地か。確かに、それは、少しやっかいだ。
だが、プロンは、カルレインの今回の功労に免じて、多少のわがままなら聞いてやろうという気になっていた。
「確かに、そう言った」
しゃがれた声が出たプロンだが、悠然と答えてみせた。
それを補ってあまりあるくらい、いかにも、王らしく。
一度言った発言を、王が撤回など出来るものか。
こうなったら、なにがなんでも、望みの品を準備してみせよう。
自分に出来ないことなどないと思っているプロンは、余裕のある態度で、カルレインをみおろした。
しかし、カルレインの望みは、プロンの予想した、そのどれでもなく、
はるかに厄介な代物だった。
「私は、この王女を妻に迎えたいのです」
カルレインの言葉に、臣下たちがざわざわと騒ぎ出した。