盲目の天使
え?褒美、ってどういうこと?
私は、カナンのために、政略結婚をするのではないの?
リリティスは、カルレインの言葉を一言も聞き逃すまいと、全神経を耳に集中した。
「王女を褒美にほしいと申すのか。
どういう考えがあってのことだ?説明しろ」
プロンは、眉根を寄せて、カルレインを見下ろす。
妖しい光を放つ、二つの眼(まなこ)。
「はい。カナンは、現在ノルバスの征圧下にありますが、民の大半は、農民です。
農民がノルバスの介入を恐れ、農地を捨てて移動してしまえば、
農地が荒れ、せっかく収穫できる作物が手に入らなくなります。
しかし、私がカナンの王女を娶れば、
カナンの農民も、農地を捨てて逃げ出したりはしないでしょう。
力で征圧するよりも、懐柔したほうが得策でございます」
年老いたといえども、他を圧倒するプロンの眼光に臆することもなく、
カルレインは、真正面から堂々と自分の意見を述べた。