盲目の天使
リリティスの笑顔を見ることができて、カルレインは怒るどころか、大きな声を出して喜びを表したいくらいの心地だった。
少しは、緊張がほぐれたようだな。
旅の間に、打ち解けた表情を見せるようになったリリティスが、
城に入ってからというもの、始終強張った顔をしていた。
初めて故国を出、しかも敵国の中心地に来たのだから、それは仕方のないことかもしれない。
しかし、カルレインは、それがどうにも許せなかった。
「オルメの事か。仕方ない。あれは、俺の乳母だからな」
「まぁ、そうなのですね」
「俺の母は、俺が幼いときに死んだからな。母代わりに育ててもらった。
少々厳しいところもあるが、面倒見が良い女だ」
カルレインの、とてもやさしい声音を聞いて、リリティスは、優しい気持ちになる。
カルレイン様の声は、本当に心地よい。酔わされてしまいそうだわ。
緊張の糸が、魔法にかけられたように、すっかりとけて、リリティスは、この日初めてくつろぐことができたが。
「ところで、今日のことだが・・」
カルレインの遠慮がちな声に、嫌な予感がはしる。
「王が言ったことは気にするな。俺は、お前を妻にする。
誰にも邪魔はさせない。お前は、堂々としていろ。いいな?」