マスカレヱド
 あれ?

 理有?


「みゃー、こ。逃、げて」


 声が聞こえたのは、上ではない。倒れこんだ私よりも下、アスファルトに近い位置。

 恐る恐る視線を下へと向ける。


「は、やく」


 緑のパーカーは、夜の闇以上に黒く染まっていた。

 だらりとした右腕には力が入っておらず、震える左腕だけで、私と怪人の間に割り込もうとしている。

 何してるのさ。


「理有……?」


 血は止まっていない。止まらない。黒い地面に、それより濃い円が広がっていく。

 そうだ、止血。

 止血をしないと。

 弟も、理有も、怪我をしてるんだから止血をしなきゃ。

 そうそう、免許を取るときにならったよ。

 直接圧迫法だっけ? うん、それで。
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