サラリーマン讃歌
その横には、例の居酒屋で久保の携帯の写メで見た彼の彼女が、手持ち無沙汰に立っていた。

「いつも兄がお世話になってます」

久保の妹の悠里(ゆり)は外見とは裏腹に、たいそう大人びた仕草で挨拶をしてきた。

慌てて挨拶を返すと、悠里の横で俺を見ていた久保の彼女である梓(あずさ)がクスッと笑う。

「なんかタッちゃんに聞いてた感じと違うね。凄い人だ、凄い人だってタッちゃん、うるさいから」

俺は苦笑するしかなかった。そんな凄い人には見えないと言いたいのだろう。

「結構幼く見えるし」

「コラ、梓!いきなり何言ってんだよ」

慌てたように久保が止めに入ってきた。梓は首をすくめ、怖がる振りをして素早く悠里の後ろに隠れた。

「すいません、桜井さん。コイツが来る予定はなかったんですけど、桜井さんが来るって言ったら、行く行くってうるさかったもんですから……」

「いや、全然いいよ。どうせだったら大人数の方が楽しいだろ」

そんな俺達の遣り取りを笑顔で見ていた久保の親父さんは、相変わらず軽いテンションで、ソファを勧めてくる。

「ま、こんな所で立ち話も何ですから……」

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