サラリーマン讃歌
以前、写メを見たときには、顔全体から胸くらいまでしか写っていなかったので気付かなかったのだろう。

「一ノ瀬 空見子って知ってる?」

「え?知ってるよ……なんでクミちゃんの事知ってるの?」

「なんでって……」

勢いで訊いてしまった自分に後悔した。口籠っている俺を不審そうに梓は見ていた。

だが、急に何か思い出したのか、得心したとばかりに大きく頷いた。

「空見子は私の親友だよ」

梓はそう言うと、今日会ってから初めての俺への笑顔を見せた。

「今度遊びにいかない、私達と?」

「へ?」

俺と久保が二人同時に同じ反応をした。

「いいから遊びに行こ。ね?」

急かすように言ってくる梓に俺は頷くことしか出来なかった。

「じゃ、明々後日の水曜に遊びに行こうね」

カレンダーを見ながら強引に日程を決めた梓は、満足そうにニコッと笑った。

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