君への願い事
同時刻。

利枝の部屋にもハピエルが降臨していた。
ハピエルの姿はジャミエルとよく似ていて違う点としては髪が銀髪のモジャモジ
ャなところだろうか。
しかし話しの展開はジャミエルと違って様子がおかしい。

「だからですねぇ、あなたと山田瞬という男性をですねぇ…」

ハピエルの話しを割るように利枝が怒鳴りだす。

「せやからそんなんしていらんて言うてるやろ!」
「何故です?好きなんでしょ?」
「やかましわ!」

愛犬のテリーもハピエルに向かってうなっている。

(参ったなぁ…。気が強いどころじゃないよ、この娘…。しかもキューピッドが歓
迎されないなんて聞いたことないよ…。)

「お父さ~ん!なんか変な子がウチに入って来て…」
「わーーっ!部外者は呼ばないで!僕の存在が他の人にバレた瞬間、クビになる
んです~!一人前になるまでキューピッド続けたいんです~!!」
「そんなもん知るか!」
「わかりました、わかりました!お互い落ち着きましょう。無理には聞きません
が何故恋愛を避けるのですか?年頃なのに…。」
「……。恋しても無駄やからや……。」
「え、無駄?何故です?」
「オトンの仕事で転勤ばっかでな。好きな人が出来たと思ったら引っ越しや。初
めて付き合った人と遠距離もやったけどいつの間にか音信不通。休みの日に
飛行機乗って会いに行ったら地元の子と手ぇ繋いでるの見てな。」
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