僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「彗も吸ったでしょ」
説教が始まったら適当に受け流そうと思ってたのに、予想外の言葉に目を見張る。
「いや? 吸ってねぇよ」
平然と嘘をついて彗をかばってみたが、睨まれてすぐに認めてしまった。
「何で分かんの? やっぱお前ら双子なわけ?」
「吸い殻見れば分かるよ」
うんざりしたように髪をクシャッと握った凪は腰を上げ、キッチンへ向かう。
その背中を見てから空き缶の中を覗くと吸い殻はなく、細かい灰だけが残っていた。
既に捨ててしまったのは分かったが、疑問だけが残る。
「吸い殻見て分かるって……なんで?」
尋ねると、凪はキッチンに入る前に振り向きながら答えた。
「彗、噛み癖あるの」
「噛み癖?」
って、あれだろ。
紙パックのジュースとか飲む時にストロー噛んじゃう感じだろ?
「ああ……彗は甘えん坊なわけね」
「そんな話をしてんじゃないのよ」
……じゃあなんの話だよ。彗が吸ったからなんだってんだ。怒るなら早く怒ればいいのに。
嫌いなんだよ。怒られるとか、そういう空気。