僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「おじさん、急用って言ってましたよね。親戚の誰かが亡くなったとか、そういう話っすか?」
どうしよう、どうしようと焦りだけが募る中で、祠稀の声がすっと耳に入った。
隣を見ると、祠稀はおじさんから目を逸らさない。その眼差しの強さに少し体が強張った。
疑うような、何か掴もうとしてるような、獲物を捉えて離さないような、そんな眼差し。
あたしは祠稀からおじさんに視線を移し、その表情を窺う。おじさんは祠稀を見返していたけど、口ごもるように視線を落とした。
……きっと祠稀は、あたしと同じことを思ってる。
多分、訃報じゃない。もしそうだとしたら、いくら嫌な人からの連絡でも、彗は返すと思う。
だからきっと――…。
「金銭的な話だ」
ろくな話じゃない……。