僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


さっき、激しい物音が彗の部屋から聞こえた。きっと彗は行き場のない感情を、物に当てたんだと思う。


そういう気持ちは、分からなくもない。


そんなことを考えていると、不意に凪が口を開いた。


「彗……ってさ、喋り方ゆっくりでしょ。ワンテンポ、間あけたり……」


俺と有須は顔を見合わせてから、凪に視線を戻す。


何か言いたいことがあるなら、俺たちは耳を貸すだけだ。


「ああ、そういやそうだな」

「昔からね……そうなんだ」


ふっとおかしそうに笑う凪の瞳は、潤んでいた。


「……あたしと彗って、イトコでしょ? ……昔ね、9歳まで一緒に住んでたんだ……」


ああ……だから、6年ぶりの再会って言ってたのか。


……なるほどね。一緒に住んでいたってことで、なんとなく納得がいく。


このマンションに4人がそろって割とすぐ、凪が彗の部屋で寝ていたこととか。お互いが可愛くて仕方ないんだろうなって感じたこととか。


今よりもっと幼い頃、ふたりは一緒にいるのが当たり前だったんだろう。

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