僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


凪と彗はお互いが大切で、大事で、失いたくない相手なんだろうなとぼんやり思う。


苦しいはずなのに、駆け寄った凪を邪険にすることなく話しかけた彗。ひとりになろうとした彗を、ひとりにしたくないと涙を流した凪。


俺だったら邪険にする。うっとうしく感じる。

だから今の彗にも何を言ったって伝わらないだろうと思って、ひとりにさせとけって言ったのに。


『無駄じゃないっ!』


そう叫んだ凪の瞳は、責めるように俺を睨んでいた。


理解できないことに変わりはないけど、こんな人間もいるんだなと呆気にとられたのも事実だ。


凪と彗はきっと、好きだとかそんな感情で片付けられないほど……むしろお互いに好意や愛情を飛び越えた想いを抱くふたりなんだろうかと、感じていた。


本当になんとなくそう感じるだけなんだけど。ふたりの間には、他人が割って入れない領域があるような、そんな気がしていた。



「ごめん……もう、平気だから」


鼻をすすってから凪はココアを口に運ぶ。どう見ても平気そうに見えない。

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