僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……有須、顔赤いよ?」

「へ!? わ、わわっ!」


ドキンと鼓動がうずくと同時に手に力を入れてしまい、歯磨き粉が大量に出てきてしまった。


「……凄い出たよ?」

「あはは! ほんとだね! えっと、ライトのせいで赤く見えるんじゃないかなっ!」


笑いながらごまかすと、「ああ、そっか……」と彗は納得してくれたみたい。


あたしは歯ブラシに付いた大量の歯磨き粉を洗い流してから、彗を見上げた。


「あの、彗。……聞いてもいい?」

「……ん? ……いいよ」


彗はやっぱり間をあけて喋る。そのテンポがあたしには心地よくて、何度も彗の声が聞きたくなるんだ。


「傷は、どうするの? ……病院行けば、傷跡が薄くなる薬とかあるの、知ってる……?」


余計なお世話かもしれないと思いながらも彗を見上げると、垂れ目がちな瞳にあたしが映っていた。


「……このままだと思う。……生きた証だって、凪が言ってくれたから」


彗はどこか複雑そうに、それでも嬉しそうな笑みを浮かべた。


……生きた、証……。
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