僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「いいよ、有須はそのままで」


くすくすと手の甲で口元を隠しながら笑っていた大雅先輩は、優しい笑顔を浮かべてくれた。


……そ、そのまま?


テンパッていたからか、ちゃんと理解できなくて。その間に大雅先輩はガードレールから立ち上がり、あたしを見下ろす。


「そういう、男慣れしてない有須のままでいいよってこと」

「あ……えと……」


つまり、つまらなくはないってことかな?


そのままでいいって言うのは、あたしが緊張してるのを分かって、気遣ってくれたのかな?


「えと、はい……何から何まですみません……」


自分のダメダメっぷりに落胆すると大雅先輩は目を丸くしてから、くしゃっとした笑顔を見せる。


「ははっ。本当かわいいね」

「!」


大きな手が急に頭に向かってきて、ビクッと体を揺らす。そんなあたしを見て、大雅先輩の手が宙で止まってしまった。

< 350 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop