僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「いいよ、有須はそのままで」
くすくすと手の甲で口元を隠しながら笑っていた大雅先輩は、優しい笑顔を浮かべてくれた。
……そ、そのまま?
テンパッていたからか、ちゃんと理解できなくて。その間に大雅先輩はガードレールから立ち上がり、あたしを見下ろす。
「そういう、男慣れしてない有須のままでいいよってこと」
「あ……えと……」
つまり、つまらなくはないってことかな?
そのままでいいって言うのは、あたしが緊張してるのを分かって、気遣ってくれたのかな?
「えと、はい……何から何まですみません……」
自分のダメダメっぷりに落胆すると大雅先輩は目を丸くしてから、くしゃっとした笑顔を見せる。
「ははっ。本当かわいいね」
「!」
大きな手が急に頭に向かってきて、ビクッと体を揺らす。そんなあたしを見て、大雅先輩の手が宙で止まってしまった。