僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「あの、あたし、あの……せっかく誘ってもらったのに、つまらない思いをさせてないかと……」


ああ、ちゃんと考えてから言えばよかった……!


支離滅裂なのは分かってるのに、続く言葉が見つからない。


「すみません、あの……っ」


あれっ!?


見上げた先に謝ろうと思った人はいなくて、振り返ると大雅先輩は立ち止まって俯いていた。


「え!? え!? あたし何か変なこと言いました!? 言いましたよね! ごめんなさい!」


駆け寄ると、大雅先輩は口を覆って体を震わせている。


「ふはっ! かわいいね、有須」

「え!?」


自分でも分かるほど一瞬にして赤くなった顔を見て、大雅先輩はガードレールに腰掛け、また笑い出した。


何、なに!? あたし、どっかおかしい!?


歩道を歩く人や自分の姿を代わるがわる見ても、大雅先輩が笑う意味も、かわいいと笑われる部分も見つけられない。

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