僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「ひとりじゃねぇよ、お前は」
「……」
「ココアー」と言いながら冷蔵庫に向かう祠稀の背中を見つめながら、嬉しさと、ほんの少しの不安。
……祠稀も過去になにかあったのかな、なんて……余計な詮索だよね。
祠稀は、本能のままに生きてると思う反面、本当はものすごく考えてるんじゃないかって思う。
何も考えてなさそうで、って失礼だけど……実は誰よりも考えて生きてるみたいに感じるの。
祠稀は今、幸せかな。あたしが感じる幸せを、祠稀も感じているのかな?
「……祠稀」
「あー?」
「あの、……ありがとう」
そうだと、いいな。もっと、幸せを感じてくれたらいいな。そう思って、伝えた。
「祠稀がいてくれて、幸せ。話を聞いてくれて、嬉しい。……ありがとう、祠稀」
祠稀は気恥ずかしいのか、蒼が掛かった長い黒髪を掻きながら「ああ」と、それだけ呟いた。