7月7日、逢いたくて


「Thank you、」


次の日、シャトルバスに乗ってハワイ観測所へ向かったあたしは

カタコトの英語を駆使して、ようやく彼方が居ると聞いた研究所に着いた。



片手には英会話の本。

どこから来たんだ、と言わんばかりの好奇の目をすり抜けて
バクバクと煩く騒ぐ心臓を抱え学内をさ迷う。


真っ白な建物が、高圧的にあたしを見下ろしていた。




日本を発つ前、館長が観測所の知り合いに話をつけてくれたみたいだけれど

こんなに広い敷地で彼方はおろか、その知り合いですら見つけられそうにない。


飛び交う聞き取れない英語に、泣き出しそうな不安を必死で打ち消した。



学内では、ちらほらと日本人の姿を見かける事が出来た。

なのに肝心の彼方には偶然どころか見かける事すらなく
ただただ、迷路みたいな学内をうろつき回るあたし。



仕方なく、勇気を振り絞って
すれ違った学生に声を掛けると

「星野くんの知り合いなの?」

と逆に聞き返された。




どうやら彼方はこの研究所でかなり有名らしい。

どの人に聞いても
稀に見る天才だ、と絶賛されるけど、肝心の居所はみんな不明だと言う。


気が付けば夕暮れが包んで
オレンジに染まる観測所に、半ば諦めの溜め息が漏れた。



と、その時。



「……オリ…?」


戸惑ったような声が、背後からあたしの名前を呼んだ。







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