7月7日、逢いたくて


「ありがとうございました。」

またお越し下さい、そう付け加え最後のお客さんを見送る。

そして慣れた手付きで内側から鍵を閉めると
急に静寂へ包まれた館内を見渡した。



「…結局来なかった、か。」

独り言を吐き捨て、それと同時に零れ落ちる溜め息。

ポケットにしまっていた携帯を取り出しても、着信はない。



「…バカ彼方。」

なんて八つ当たりは、広々とした館内に虚しく溶けてゆく。


何だか、余計寂しくなった。




結局、今日も彼方は来なかった。

あの後、もう一度だけ電話してみたけれど同じ事の繰り返し。



せめて陽平との事をお礼したくて。


あまり交わした事のないメールを送ってみた。

嫌でもほぼ毎日ここで会えていたから、今まで滅多にメールなんてしなかったけど。



…でも、結果は変わらず。

未だに返信はない。



彼方って、家どこだったっけ。


うーん、と疲れた頭を捻り思い出そうと試みる。


けれど
イマイチ思い出せない。



「はぁ…、」

半ば諦め気味に溜め息を吐き出しすと、掃除をするべくドームへと向かった。







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